2024年度 携帯電話提供事業報告
2024年度の携帯電話提供事業は、生活困窮者やホームレス経験者に対して、携帯電話を一定期間無償で貸し出すことで、社会的自立を支援することを目的として実施されました。背景には、「家や携帯がないと何も始められない」「就職や福祉支援を受けたくても連絡手段がなくて困っている」といった当事者の声がありました。携帯電話は単なる通信手段ではなく、就職や住居確保における信用の証明となり、社会との接点を取り戻すための重要なツールであることが分かっています。
本事業は、支援団体と連携して行われ、岡山市を中心に15団体と覚書を交わして実施されました。そのうち3団体は2024年度から新たに参加しています。
2024年度に貸出を受けたのは41人で、そのうち男性が約8割、女性が約2割を占めました。利用者の年齢層は10代から70代までと幅広く、貸出の主な目的は「住居確保」や「就職活動」が最多でした。貸出期間終了後、31人が返却し、そのうち24人(約8割)が目的を達成したり、自分で携帯を契約するなど次のステップに進んでいます。
特に若年層からのニーズが増えており、スマートフォンが生活必需品となっている現代においては、貸出携帯で基盤を整えた後、すぐに自分で契約する傾向も見られました。携帯電話は、住居契約時の保証協会への連絡や、職場・支援団体・行政機関との連絡など、多岐にわたる場面で活用されています。一方で課題もあり、利用期間が長期化しているケースについては、本人の生活状況に応じて貸出の上限を設けるなど、支援のあり方を検討する必要があります。
このように、本事業は通信困窮者の実態を可視化しながら、その支援の重要性と効果を示しており、今後は公的支援制度の創設・拡充を目指して、引き続き取り組んでいく必要があります。
事業担当者:松本あゆみ
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