ミャンマーの労働力分析―来日のための送り出し機関の実態とミャンマー人の海外移住の可能性―

本報告書は、2021年の軍事クーデター以降、急激に変化するミャンマーの政治・経済情勢が労働移動に与える影響を分析し、特に日本への労働者派遣に焦点を当てて、現地の制度運用と若年層の選好行動を明らかにする中間報告である。ミャンマーの若者にとって、日本への就労は安全確保と将来設計を可能にする数少ない選択肢の一つとなっており、軍政下の制限や徴兵政策によって、その出口的性格はより強調されつつある。

本研究では、送り出し機関30社へのインタビュー、来日希望者150名へのアンケート、および30名への半構造化インタビューを通じて、ミャンマーにおける送り出し制度の現状と課題、制度選択の背景にある個人の資源や意識を分析した。労働者の制度選好においては、技能実習制度が手続きや情報入手の容易さ、支援の手厚さといった面で参加のハードルが低い一方、初期費用が高額となる傾向があり、特定技能制度はより高収入や将来的な定住の可能性といった魅力がある反面、語学や技能試験の負担が大きく、準備に時間と資源が必要であることが明らかになった。このような制度上のトレードオフを踏まえ、候補者は自身の語学力や経済状況、将来計画に応じて戦略的に制度を選択している。

送り出し制度は、多層的な承認手続き、情報アクセスの不平等、費用負担の重さなど、構造的な課題を内包しており、政情不安や兵役制度の影響を受けて実務的な制約も強まっている。今後は、送り出しプロセスの透明化と簡素化、日本語教育と職業訓練の質向上、倫理的な機関運営を支援する制度設計が求められる。本報告は、ミャンマーからの持続可能な労働移動に向けた基礎的知見を提供するものである。

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研究員:ミー モー トウーザー