日本におけるインドネシア人労働者の派遣・受け入れ・生活支援における、草の根的アプローチとトップダウン的アプローチの事例研究

本調査は、日本においてインドネシア人を中心とする外国人労働者の受け入れと社会統合に関し、地方自治体・企業・教育機関・地域団体・NGO がどのような役割を果たしているかを解明することを目的として実施したものである。
少子高齢化が進行する日本社会において、地域産業の維持や介護・製造分野における人材確保は喫緊の課題となっている。一方、労働者の生活支援、言語教育、文化・宗教面への配慮、地域住民との関係形成といった受入れ後の統合支援は、地域によってばらつきが大きい。本調査では、これらの政策・実践の差異と成功要因を記述し、地域間で共有可能なモデル構築に寄与することを目指した。

調査対象は、宮城県、静岡県、浜松市、岡山県美作市など、外国人受入れと多文化共生の取り組みが進んでいる地域である。文献調査、統計分析、自治体担当者・受入企業・送り出し機関・国際交流団体へのインタビュー、現地フィールドワークの組み合わせにより、以下の特徴が確認された。
第一に、自治体主導の「トップダウン型支援」と、地域団体や企業が主体となる「草の根型支援」は、相互補完的に機能する必要がある。例えば宮城県では、県とインドネシア政府との協定締結、フェア開催、日本語学校設立など制度的基盤が形成されていた。一方、地域での生活定着を支える上では、国際交流協会や地域ボランティアによる語学支援や居場所づくりが重要な役割を果たしていた。

第二に、外国人労働者を「一時的労働力」ではなく「地域の一員」と捉える視点が、長期的な定着と地域社会の持続性に大きな影響を与える。静岡県・浜松市では、永住・家族帯同を前提とした教育・住宅・就労支援が体系化されており、結果として外国人住民が地域内でキャリア、生活、子育てを継続する環境が構築されていた。
第三に、支援体制の継続性を担保するには、地域住民や若い世代を巻き込んだ担い手の育成が不可欠である。多文化共生を地域づくりと結びつけ、外国人・日本人双方が参加する交流や協働の機会を増やす取り組みが求められる。
本調査は、これらの実践知を整理し、地域が相互に学び合うための知見提供を目的とするものである。