妊娠期における子ども虐待ハイリスク要因アセスメントの実態調査

虐待リスク要因であると高率に認識されていた項目は、被虐待歴(97.1%)、DV被害(92.2%)であったが、妊婦全員に確認をしているとの回答は、被虐待歴2.9%,DV被害9.7%と低率であった。いずれも約6割の施設で、必要と思われる妊婦にのみ確認しており、現場での臨機応変な対応が鍵となっていた。医療者の経験年数や信頼関係に左右されることなくハイリスク者を抽出するため、自記式のスクリーニングツールを現場で活用するなど、体制の見直しが必要である。過去の流産・死産経験は非経験群と比較して精神的不調を来しやすく要支援の対象であるが、虐待リスク要因であるとの認識は16.5%と低率であった。
子ども虐待対応に関する研修会への参加経験は、ハイリスク者の発見およびハイリスク者の対応への自信に関連していた。自施設に子ども虐待に対応する委員会等を有することは、ハイリスク者への対応の自信に関連していたが、その約9割が周産期医療センター・一般病院であり、診療所における医療者間の相談体制の不足が示唆された。施設同士の情報交換を目的の一つとした研修会等の開催や地域連携の強化により、施設間で妊産婦が受けるケアの格差をなくすことが課題である。

担当研究者:川崎医療短期大学 弘中藍子
研究期間:2019年4月1日~2020年3月31日